介護福祉

介護・福祉事業の「税務調査」で見られやすいポイント。経費・役員報酬・現金管理の注意点

介護・福祉事業でも、税務調査は決して他人事ではありません。

介護報酬や障害福祉サービス等報酬は、公的な請求が中心であるため、「売上は国保連などから入るので調査で問題になりにくい」と考える方もいます。確かに、売上の多くは通帳や請求データで確認しやすい面があります。

しかし、税務調査で見られるのは売上だけではありません。経費、役員報酬、現金管理、親族取引、外注費、車両費、交際費、福利厚生費、未収金、固定資産、源泉所得税など、確認されるポイントは多岐にわたります。

介護・福祉事業は、現場と会計が密接につながっているため、日々の処理を整えておくことが大切です。

売上は請求データ・通帳・会計の一致が見られる

税務調査では、まず売上が正しく計上されているか確認されます。

介護・福祉事業では、国保連等への請求、利用者負担分、自費サービス、食費、家賃、日用品費、送迎費、文書料など、複数の売上や入金があります。

公的請求分は比較的確認しやすい一方で、利用者負担分や自費分は計上漏れが起きやすいです。

調査では、請求ソフト、国保連等の支払通知、利用者請求書、領収書、通帳、会計帳簿が照合されることがあります。

特に、決算月前後の売上計上時期には注意が必要です。サービス提供月、請求月、入金月がずれるため、入金ベースだけで処理していると、決算期をまたいだ売上がずれる場合があります。

売上は、入金されたときではなく、原則としてサービス提供に基づいて適切な期に計上する必要があります。

経費は事業関連性が重要

税務調査でよく確認されるのが経費です。

介護・福祉事業では、車両費、ガソリン代、食材費、消耗品、研修費、会議費、交際費、福利厚生費、通信費、修繕費、備品購入費などが発生します。

経費として認められるには、事業との関連性が説明できることが重要です。

たとえば、車両費であれば、送迎、訪問、営業活動などに使っていることを説明できる必要があります。ガソリン代や駐車場代が多い場合、車両台数、走行距離、送迎記録、訪問記録との整合性が見られることがあります。

食材費であれば、利用者食、職員食、会議用、接待用が混在しないように管理することが大切です。職員の食事代を会社が負担している場合、福利厚生費として処理できる範囲か、給与課税が必要かの確認も必要になります。

経費は、「領収書があるから大丈夫」ではありません。何のために使ったのかを説明できることが大切です。

役員報酬は定期同額給与に注意

法人の場合、役員報酬も税務調査で見られやすい項目です。

役員報酬は、原則として定期同額給与など、税法上の要件を満たさなければ損金算入できません。期中に社長の判断で自由に増減させると、損金不算入となる可能性があります。

介護・福祉事業では、開業初年度や業績変動時に、「資金が苦しいので社長の報酬を下げる」「利益が出そうなので報酬を増やす」といった判断をしたくなることがあります。

しかし、役員報酬は事業年度開始から一定期間内に決定し、毎月同額で支給することが基本です。変更する場合は、定時株主総会の決議や議事録、変更理由、支給時期を整理しておく必要があります。

また、社長や親族への給与が高額な場合、勤務実態や職務内容、金額の妥当性が確認されることがあります。

役員報酬は、資金繰りと税務の両方に影響するため、決算直前ではなく、期首に計画的に決めることが大切です。

現金管理は特に注意

介護・福祉事業では、現金管理も重要です。

利用者負担分、食費、日用品費、家賃、レクリエーション費、少額の立替精算などで現金を扱うことがあります。現金は、通帳に記録が残らないため、管理が甘いと税務調査で問題になりやすいです。

現金を扱う場合は、現金出納帳を作成し、入金日、支払日、相手先、内容、金額、残高を記録しましょう。実際の現金残高と帳簿残高が一致しているか、定期的に確認することも必要です。

よくある問題は、領収書の紛失、現金売上の計上漏れ、社長個人のお金との混在、職員立替の未精算、用途不明金、現金残高のマイナスです。

現金残高がマイナスになることは、実際にはあり得ません。帳簿上マイナスになっている場合、入力漏れ、立替処理漏れ、売上計上漏れなどが疑われます。

現金取引は、できるだけ口座振替や銀行振込、キャッシュレスに移行することも有効です。

代表者立替・役員借入金も整理する

開業初年度や資金繰りが苦しい時期には、社長が会社経費を立て替えることがあります。

その場合、会計上は役員借入金として処理することがあります。社長が会社にお金を貸している状態です。

ただし、役員借入金が長期間増え続けると、会社の資金繰りが慢性的に不足しているサインになります。また、何の支払いを立て替えたのか、領収書や明細がない場合、経費性を説明できないことがあります。

逆に、会社から社長へお金が出ている場合は、役員貸付金、役員賞与、給与、仮払金などの論点が出ることがあります。

社長個人と会社のお金は、明確に分ける必要があります。

外注費と給与の区分

介護・福祉事業では、外部人材や業務委託を使うこともあります。

しかし、実態として会社の指揮命令下で働き、勤務時間や場所が決められ、会社の備品を使い、継続的に業務を行っている場合、税務上は外注費ではなく給与と判断されるリスクがあります。

給与と判断されると、源泉所得税、社会保険、労働保険、消費税の処理に影響します。

業務委託契約書があるだけでは十分ではありません。実態が重要です。

外注費として処理する場合は、契約内容、業務範囲、請求書、成果物、指揮命令の有無、勤務管理の実態を整理しておきましょう。

帳簿書類の保存を徹底する

税務調査では、帳簿や請求書、領収書、契約書、通帳、給与台帳、源泉徴収簿、固定資産台帳などの確認が行われます。

法人は、帳簿書類を一定期間保存する必要があります。紙だけでなく、電子取引データの保存にも注意が必要です。

介護・福祉事業では、会計資料だけでなく、請求データ、利用者請求書、契約書、重要事項説明書、勤務表、給与資料、送迎記録なども会計処理の根拠になります。

資料が整理されていないと、正しい処理をしていても説明に時間がかかります。

まとめ

介護・福祉事業の税務調査では、売上だけでなく、経費、役員報酬、現金管理、代表者立替、外注費、給与、未収金、固定資産、帳簿保存などが見られます。

大切なのは、日頃から「説明できる会計処理」をしておくことです。

経費は事業関連性を説明できるか。役員報酬は定期同額になっているか。現金出納帳は実際残高と合っているか。社長個人と会社のお金が混ざっていないか。請求データと会計売上が一致しているか。帳簿書類は保存されているか。

当税理士法人では、介護・福祉事業者向けに、税務調査前の会計チェック、経費処理の確認、役員報酬の設計、現金管理体制の整備、月次監査、帳簿書類の整理を支援しています。税務調査で慌てないためには、毎月の会計処理を整えておくことが最も重要です。

このコラムを監修した税理士

田代 健太郎

クロスト税理士法人 代表社員

近畿税理士会所属、登録番号126849号
税理士法人3社での勤務を経て、2015年に「田代健太郎税理士事務所」を設立。その後2018年に法人化し「クロスト税理士法人」に。
財務・税務調査の専門家として、決算申告業務、経営支援業務、独立・開業支援業務、医業福祉業の経営支援業務などの業務を提供。
法人に対する支援業務にとどまらず、生命保険・金融資産の検討・見直し、不動産運用に関するコンサルティング、
また相続申告、相続対策など、個人に対しても幅広い各種サービスを提供している。

書籍:「税務調査の良い受け方・正しい対応方法」、「会社経営者であれば知っておきたい節税のイロハ」、「創業計画書つくり方・活かし方」、ゼッタイ得する会社のつくり方はじめ方」、「相続の税金と対策」、「歯科医院経営の成功手法がわかる本」他。

クロスト税理士法人 https://crosst-tax.jp/

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