介護福祉
介護・福祉事業の銀行融資で見られるポイントとは?金融機関に伝わる事業計画書の作り方
介護・福祉事業を開業・拡大する際、銀行融資や日本政策金融公庫からの借入を検討する場面があります。
新規開設のための物件取得、内装工事、車両購入、人材採用、運転資金。既存事業の拡大、多店舗化、設備投資、ICT導入、資金繰り改善。これらにはまとまった資金が必要になります。
しかし、金融機関に相談するとき、単に「介護事業は需要があるので融資してください」と伝えるだけでは不十分です。
金融機関が知りたいのは、その事業が継続して売上を作り、利益を出し、返済できるかです。そのためには、事業計画書で、理念だけでなく数字の根拠を示す必要があります。
目次
金融機関が見るのは返済可能性
銀行融資で最も重要なのは、返済可能性です。
介護・福祉事業は社会的意義が高く、地域に必要なサービスです。しかし、金融機関は福祉性だけで融資判断をするわけではありません。
利用者を確保できるのか。売上はどのように発生するのか。人件費はいくらかかるのか。入金までの資金繰りは持つのか。借入返済をしても預金残高は不足しないのか。これらを確認します。
つまり、事業計画書では、「良いサービスを提供します」だけでなく、「どのように売上を作り、どの費用を支払い、どの利益から返済するのか」を説明する必要があります。
事業内容を具体的に書く
事業計画書では、まず事業内容を具体的に書きます。
サービス種別、対象者、定員、営業日、営業時間、提供エリア、送迎の有無、職員体制、主なサービス内容、強み、地域ニーズを整理します。
たとえば、「障害福祉サービスを行う」だけでは不十分です。就労継続支援なのか、生活介護なのか、放課後等デイサービスなのか、共同生活援助なのかによって、収益構造も人員基準も異なります。
また、「地域に需要がある」と書く場合は、地域の高齢者数、障害児・障害者の支援ニーズ、既存事業所の状況、紹介元との関係、開業予定地の特徴などを説明します。
金融機関に伝わる事業計画書は、抽象的な理念だけでなく、実際にどのような事業をどこで誰に提供するのかが明確です。
売上計画は根拠を示す
融資審査で重視されるのが売上計画です。
介護・福祉事業の売上は、利用者数、利用日数、単価、加算、稼働率によって決まります。そのため、売上計画では、単に月商を書くだけでなく、計算根拠を示す必要があります。
たとえば、定員10名の通所系サービスであれば、利用者数、稼働率、1人1日当たり単価、営業日数、加算をもとに売上を計算します。訪問系サービスであれば、訪問件数、1件当たり単価、職員1人当たり訪問可能件数をもとに試算します。
重要なのは、開業初月から満員稼働を前提にしないことです。利用者数は段階的に増える前提で、慎重な計画を作る方が現実的です。
また、紹介元、営業活動、既存人脈、連携先、問い合わせ状況など、利用者獲得の根拠も書きましょう。
人件費計画を現実的に作る
介護・福祉事業で最も大きい費用は人件費です。
金融機関は、人件費計画が現実的かどうかを見ています。
管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、看護師、介護職員、支援員、事務員、ドライバーなど、必要な職員を配置できているか。給与水準は採用できる金額になっているか。社会保険料や賞与、残業代を見込んでいるか。利用者数が少ない時期でも給与を支払えるか。
人員基準ぎりぎりで計画を作ると、欠勤や退職があったときに運営が不安定になります。一方で、最初から人を多く採用しすぎると、人件費で資金繰りが苦しくなります。
人件費計画では、最低配置、開業時配置、利用者増加後の追加採用時期を分けて考えると、金融機関にも説明しやすくなります。
資金使途を明確にする
融資を受ける場合、借りたお金を何に使うのかを明確にする必要があります。
内装工事、物件保証金、車両、備品、介護ソフト、広告費、採用費、運転資金など、資金使途を一覧にします。
ここで重要なのは、設備資金と運転資金を分けることです。
設備資金は、物件、内装、車両、備品などに使う資金です。運転資金は、開業後の給与、家賃、社会保険料、広告費など、売上入金までの支払いに使う資金です。
開業初年度は、運転資金が不足しやすいため、開業資金だけでなく、数か月分の固定費を含めた資金計画にしましょう。
資金繰り表で返済可能性を示す
金融機関に伝わる事業計画書には、損益計画だけでなく資金繰り表が必要です。
介護・福祉事業では、サービス提供から入金までに時間差があります。損益上は売上が立っていても、現金入金は後になります。
そのため、毎月の入金予定、給与支払い、社会保険料、家賃、借入返済、税金、採用費などを入れた資金繰り表を作成しましょう。
金融機関は、利益が出るかだけでなく、返済日に返済できるかを見ています。
資金繰り表では、月末預金残高がマイナスにならないか、借入返済後も手元資金が残るか、利用者数が計画より少ない場合でも資金が持つかを確認します。
慎重ケースも用意する
事業計画書では、標準ケースだけでなく、慎重ケースも用意すると説得力が増します。
利用者数が計画より少ない場合、開業が遅れた場合、採用費が増えた場合、返戻で入金が遅れた場合でも、資金繰りが持つかを確認します。
金融機関は、計画がうまくいった場合だけでなく、想定外が起きた場合の対応力も見ています。
慎重ケースで資金が不足する場合は、融資額を増やす、開業時の設備投資を抑える、採用時期を調整する、固定費を下げるなどの対策を検討します。
経営者の経験・準備状況も見られる
創業融資では、経営者自身の経験や準備状況も重要です。
介護・福祉業界での経験、管理経験、資格、地域での人脈、紹介元との関係、採用予定者、物件の確保状況、自己資金、家計の安定性などが見られます。
特に、自己資金は重要です。自己資金があることで、経営者自身もリスクを負って準備していることを示せます。
また、税金や社会保険料の未納があると、融資審査に不利になる場合があります。個人の信用情報や既存借入の状況も確認しておきましょう。
まとめ
介護・福祉事業の銀行融資では、社会的意義だけでなく、返済可能性が見られます。
金融機関に伝わる事業計画書を作るには、事業内容、地域ニーズ、売上計画、人件費計画、資金使途、資金繰り表、返済計画、慎重ケースを具体的に示すことが重要です。
「利用者は増えると思う」「需要はあるはず」ではなく、利用者数、単価、稼働率、加算、人件費、固定費、入金サイトを数字で説明できるようにしましょう。
当税理士法人では、介護・福祉事業者向けに、創業融資・銀行融資のための事業計画書作成、資金繰り表、損益シミュレーション、人件費計画、返済可能性の確認を支援しています。金融機関に伝わる計画書は、融資のためだけでなく、開業後の経営管理にも役立ちます。
