介護福祉
介護・福祉事業の月次報告書は何を見るべき?経営判断に役立つ数字の見方
介護・福祉事業では、毎月の試算表や月次報告書を受け取っていても、「結局どこを見ればよいのか分からない」という経営者様は少なくありません。
売上は増えている。利益は出ている。預金残高はある。人件費率も何となく見ている。けれど、その数字から次に何を判断すればよいのかが分からない。
月次報告書は、単に過去の結果を見る資料ではありません。経営判断に使うための資料です。
介護・福祉事業では、利用者数、人員配置、加算、請求、未収金、人件費、送迎、食費、固定費、資金繰りが密接につながっています。そのため、月次報告書では、売上や利益だけでなく、現場の動きと数字を合わせて見ることが重要です。
目次
売上は総額ではなく中身を見る
まず確認するのは売上です。
ただし、売上総額だけを見ても、経営状態は分かりません。大切なのは、売上の中身です。
サービス種別別、事業所別、部門別、利用者区分別、加算別、自己負担分、自費サービスなどに分けて確認しましょう。
たとえば、売上が増えていても、加算収入が減っている場合があります。利用者数は増えていても、単価が下がっている場合があります。新規利用者が増えていても、キャンセルや終了者が多く、安定していない場合もあります。
月次報告書では、総売上、利用者数、稼働率、利用者1人当たり売上、1日当たり売上、加算収入、返戻・過誤調整をセットで見ることが大切です。
売上が増えた理由を説明できるか。売上が減った原因を特定できるか。これが経営判断の第一歩です。
人件費率を見る
介護・福祉事業で最も重要な費用は人件費です。
給与、賞与、社会保険料、各種手当、残業代、処遇改善関連の支給、採用費、研修費などを含めて、人件費率を確認しましょう。
人件費率は、売上に対して人件費がどれくらいかかっているかを見る指標です。
売上が増えていても、人件費がそれ以上に増えていれば、利益は残りません。反対に、人件費率を下げすぎると、職員の負担が増え、離職やサービス品質低下につながります。
月次報告書では、人件費総額、人件費率、残業代、職員数、常勤換算、採用費、処遇改善支給額を確認しましょう。
特に、利用者数が増えていないのに人件費が増えている場合、残業が増えている場合、特定の部門だけ人件費率が高い場合は注意が必要です。
変動費と固定費を分けて見る
次に、費用を変動費と固定費に分けて考えます。
変動費とは、利用者数やサービス量に応じて増減する費用です。食材費、レクリエーション費、送迎燃料費、消耗品、外注費などが該当します。
固定費とは、利用者数に関係なく毎月発生する費用です。家賃、リース料、システム利用料、保険料、通信費、管理部門人件費、借入返済などが該当します。
介護・福祉事業では、売上が少ない月でも固定費は発生します。そのため、固定費が高すぎると、少し売上が落ちただけで赤字になりやすくなります。
月次報告書では、固定費の増減を確認しましょう。新しいリース契約、車両追加、家賃、ソフト利用料、保険料、広告費などが増えていないかを見ます。
固定費は一度増えると下げにくいため、契約前に資金繰りへの影響を確認することが重要です。
利益は営業利益を見る
月次報告書では、売上総利益や営業利益も確認します。
特に重要なのは営業利益です。営業利益は、本業でどれだけ利益を出せているかを見る数字です。
介護・福祉事業では、補助金や雑収入、一時的な収入で最終利益が良く見えることがあります。しかし、本業の収支が赤字であれば、継続的な経営は不安定です。
月次では、売上から人件費、変動費、固定費を差し引いた本業の利益を見ます。
さらに、単月だけでなく、累計と前年同月比較も確認しましょう。単月では黒字でも累計で赤字の場合、資金繰りに影響します。前年同月と比較することで、季節要因や利用者数の変化も見えます。
預金残高と資金繰りを見る
利益が出ていても、預金が増えるとは限りません。
介護・福祉事業では、サービス提供から入金までにタイムラグがあります。売掛金や未収金が増えていると、売上は計上されていても現金はまだ入っていません。
また、借入返済、設備投資、税金、賞与、社会保険料の支払いは、利益とは別に資金繰りへ影響します。
月次報告書では、預金残高、売掛金・未収金、買掛金・未払金、借入金残高、納税予定、社会保険料、賞与予定を確認しましょう。
特に、手元資金月数は重要です。現在の預金残高で、固定費を何か月分支払えるかを見ます。手元資金が少ない場合、返戻、入金遅れ、急な退職、車両修理などで一気に資金繰りが苦しくなります。
未収金と返戻を見る
介護・福祉事業では、請求精度も経営に直結します。
国保連等への請求、利用者負担分、自費サービス、食費、家賃、日用品費など、入金経路が複数あります。請求漏れ、返戻、過誤、利用者負担分の未収があると、資金繰りが悪化します。
月次報告書では、返戻件数、返戻金額、未請求、未収金残高、1か月超の未収、3か月超の未収を確認しましょう。
未収金は、早期対応が重要です。金額が小さいうちは見過ごしがちですが、積み上がると大きな資金負担になります。
請求ミスや加算漏れが多い場合、現場記録、請求担当、管理者確認の連携を見直す必要があります。
部門別・事業所別に見る
複数サービスを運営している場合は、会社全体の数字だけでは不十分です。
デイサービス、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援、グループホーム、障害福祉サービスなどを複合的に運営している場合、部門別の損益を確認しましょう。
会社全体では黒字でも、1つの事業が赤字を出していることがあります。反対に、ある部門の利益で別の部門の赤字を補っている場合もあります。
部門別に、売上、人件費、直接経費、共通費配分、営業利益を確認します。
特に、人件費や家賃、車両費、管理部門費用をどの部門に配分するかを決めておくことが大切です。配分ルールがないと、どの事業が本当に利益を出しているか分かりません。
月次報告書は改善アクションにつなげる
月次報告書は、数字を見るだけで終わってはいけません。
大切なのは、翌月の改善アクションを決めることです。
たとえば、人件費率が高い場合は、シフト、残業、稼働率、採用計画を見直します。売上単価が下がっている場合は、加算漏れやサービス構成を確認します。未収金が増えている場合は、請求フローや回収ルールを見直します。資金繰りが厳しい場合は、設備投資や採用時期を調整します。
月次報告書は、過去を確認する資料ではなく、未来の経営判断をする資料です。
まとめ
介護・福祉事業の月次報告書では、売上総額だけでなく、売上の中身、人件費率、固定費、営業利益、預金残高、未収金、返戻、部門別損益を確認することが重要です。
数字を見る目的は、経営者様が早めに判断するためです。
利用者数を増やすべきか。採用してよいか。設備投資してよいか。加算管理を見直すべきか。赤字部門を改善すべきか。資金繰り対策をすべきか。
月次報告書から次の行動につなげることで、経営は安定します。
当税理士法人では、介護・福祉事業者向けに、月次業績レポート、部門別損益、人件費分析、未収金管理、資金繰り表、経営ダッシュボードの作成を支援しています。毎月の数字を「見るだけ」で終わらせず、経営判断に活かしていきましょう。
