介護福祉
【新規開設版】障害児支援・介護ビジネスを立ち上げる!失敗しない資金計画と収支シミュレーションの作り方
児童発達支援、放課後等デイサービス、訪問介護、デイサービスなどは、地域の生活を支える社会的意義の大きい事業です。一方、新規開設にあたっては、支援への想いや理念だけでなく、安定して事業を継続するための資金計画が欠かせません。
障害児支援・介護事業には、人員、設備、運営に関する基準があります。開設直後で利用者が少なくても、必要な職員を配置しなければならないため、売上が安定する前から人件費や家賃などの支出が発生します。
本記事では、新規開設時に押さえておきたい資金計画と収支シミュレーションの作り方を解説します。
目次
1.開設に必要な資金を整理する
開設資金は、「設備資金」と「運転資金」に分けて考えると整理しやすくなります。
設備資金とは、開設準備のために一時的に必要となるお金です。主に次のような費用が該当します。
- 物件の敷金、保証金、仲介手数料
- 内装工事費、消防設備工事費
- 机、椅子、パソコンなどの備品購入費
- 送迎車両や社用車の購入費
- 請求・記録システムの導入費
- 法人設立や指定申請に関する費用
- 求人費、ホームページやチラシの制作費
特に注意したいのが物件選びです。サービスの種類によって必要な面積や設備などの基準が異なります。先に物件を契約すると、追加工事が必要になったり、指定申請ができなかったりする可能性があります。契約前に指定権者や専門家へ確認しましょう。
一方、運転資金とは、開設後の事業運営に必要となるお金です。給与、社会保険料、家賃、水道光熱費、車両費、システム利用料、保険料などが含まれます。
障害児支援・介護事業では、サービスを提供してから国保連等より報酬が入金されるまでに時間差があります。そのため、開設費用だけでなく、少なくとも数か月分の運転資金を準備しておくことが重要です。
2.売上は「定員」ではなく「稼働率」で計算する
収支計画でよくある失敗は、開設直後から定員に近い利用者が集まる前提で売上を計算することです。
売上は、基本的に次の算式で試算します。
「1日当たりの平均利用者数×営業日数×利用者1人当たりの平均売上」
例えば、定員10名、月22日営業、利用者1人当たりの平均売上を1万円と仮定します。1日平均8名が利用した場合、月間売上は176万円です。
ただし、開設初月から毎日8名が利用するとは限りません。そこで、次のように段階的に利用者が増える計画を作ります。
- 開設1~3か月:1日平均3~4名
- 開設4~6か月:1日平均5~6名
- 開設7~12か月:1日平均7~8名
さらに、利用者獲得が順調な「好調ケース」、計画どおりの「標準ケース」、獲得に時間がかかる「慎重ケース」の3パターンを作成します。特に、慎重ケースでも資金が不足しないかを確認することが大切です。
3.加算を過大に見込まない
障害児支援・介護事業の売上は、基本報酬に各種加算を加えて計算します。
しかし、加算には、人員配置、職員の資格、研修の実施、記録や計画書の作成など、さまざまな要件があります。開設当初からすべての加算を取得できるとは限りません。
収支計画では、取得できる可能性が高い加算のみを売上に含め、取得時期が不明確なものは別枠で表示するのが安全です。また、報酬制度は定期的に改定されるため、開設時点の最新情報を確認する必要があります。
4.人件費は給与だけではない
障害児支援・介護事業では、人件費が経費の大きな割合を占めます。
人件費を計算するときは、給与だけでなく、次の費用も含めなければなりません。
- 会社負担分の社会保険料
- 通勤手当、残業代
- 賞与、昇給
- 求人広告費、人材紹介料
- 研修費、健康診断費
- 退職や休職に備えた代替人員費
利用者が少ない時期でも、人員配置基準を満たすための職員は必要です。また、採用難により、予定より給与水準を上げなければならない場合もあります。
最低限の人数だけで計画するのではなく、急な退職や欠勤にも対応できる人員体制を検討しましょう。
5.損益分岐点を確認する
損益分岐点とは、利益がゼロになる売上高です。つまり、「毎月いくらの売上があれば赤字にならないか」という基準です。
例えば、月間経費が160万円、利用者1人1日当たりの平均売上が1万円、月22日営業の場合、赤字を避けるためには1日平均約7.3名の利用が必要です。
損益分岐点を利用者数に置き換えることで、具体的な営業目標が明確になります。ただし、欠席、請求の返戻、残業、車両修理なども考慮し、ある程度余裕のある目標を設定しましょう。
6.利益と資金繰りを分けて考える
収支上は黒字でも、預金残高が不足することがあります。
その主な理由は、売上計上から入金までに時間差があることと、借入金の元本返済が経費にならないことです。帳簿上は利益が出ていても、借入返済後に現金が残らなければ事業を継続できません。
資金繰り表では、売上をサービス提供月ではなく、実際の入金予定月に記載します。給与、社会保険料、賞与、税金、借入返済、車検なども実際の支払月に反映しましょう。
開設後12か月、できれば24か月分の資金繰り表を作成し、各月の預金残高がマイナスにならないか確認することが重要です。
7.融資は開設前に検討する
自己資金だけでは余裕がない場合は、日本政策金融公庫や金融機関の創業融資を検討します。
融資審査では、経営者の経験、自己資金、必要資金の根拠、職員の確保状況、利用者獲得の見込み、借入金の返済能力などが確認されます。
売上を「月200万円」と記載するだけでなく、営業日数、平均利用者数、平均単価に分け、計算根拠を説明できる計画を作りましょう。
まとめ
障害児支援・介護事業の新規開設では、初期費用だけでなく、報酬が入金されるまでの運転資金と、利用者が増えるまでの赤字補填資金が必要です。
利用者数や加算を楽観的に見積もらず、人件費、借入返済、納税まで含めて資金繰りを確認しましょう。
当税理士法人では、障害児支援・介護事業の新規開設に向けた収支シミュレーション、資金繰り計画、創業融資などのご相談を承っております。開設後も安定して事業を継続できる計画を一緒に検討いたします。
