介護福祉

【介護事業全般】介護事業の運営で気をつけるべき点

家族介護

介護事業の開業相談に多くの方が来られますが、開業動機をお聞きすると様々です。

ご相談に来られた、ある方は家族介護が動機でした。

重度の家族の介護を事業所に依頼していたが、サービスに不信を抱き隠しカメラで監視したそうです。

その結果、虐待というほど酷いものではなかったのですが、家族からしたらもう少し丁寧に扱って欲しいという不満があったそうです。

そこで他人に依頼するより自分で介護事業を立ち上げて、家族を介護したいということで、ご相談にこられました。

とても良く分かる話です。

しかし、ここで注意しなければならないことは、家族介護で介護保険を使って1割ないし2割負担している人との公平性の問題です。

すなわち介護保険の事業所として、家族の介護をしながら実質的に8割ないし9割の収入を得られることと、1割ないし2割負担しながら家族介護をしている人との公平性を保たなければなりません。

居宅介護事業所の事業運営における留意点について

この両者のバランスについて、大阪府の「居宅介護事業所の事業運営における留意点について(https://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshido/jiritu_top/kyotaku_uneiryuuiten.html)」において、次の不適切事案を公表し、注意喚起をしていますが、判断基準として参考になります。

ヘルパーと契約利用者が同棲同居しながら、不正に介護報酬を得た事例

 最初は別居であったヘルパーが、サービス提供を行っているうちに契約利用者と親しくなり、同棲同居して身内として介護していた行為を、ヘルパーの業務を行ったものとして介護報酬を請求している事例がありました。

他人であっても、同居していれば家族とみなされ、同居家族へのサービス提供は、運営に関する基準により禁止されています。

また、別居の家族によるサービス提供についても、別居の家族が身内の契約利用者のみにサービス提供している事例がありました。契約利用者への援助が、障がい福祉サービスなのか身内としての介護なのかが区別できるようにしておく必要があります。できる限り複数のヘルパーがサービス提供できるようシフトを組むようお願いします。

家族の介護を開業の動機とされる方は、上の留意点を参考にしてください。

この他にも事例が掲載されていますのでご紹介します。

シフト表(月間のヘルパー派遣予定表)どおりの請求事例

国民健康保険団体連合会へ電子請求を行う時に、何を根拠にサービス提供時間等を入力していますか。ヘルパーから日々の提供記録がなかなか事業所に提出されないため、困ったあげくシフト表の(予定)をそのまま入力していませんか。実際のサービス提供に当たっては、キャンセルやサービス提供時間の変更等が生じることもありますから、ヘルパーが記入する日々の提供記録などの実績を確認したうえで、介護報酬の請求事務を適切に行ってください。

サービス提供を行っていないのに、月の支給決定上限時間数を請求している事例

実績記録内訳票は、日付順に記入されているのが普通でありますが、月の末日以降に書き忘れたかのように追記されている事例があります。これは、月末に支給決定の利用時間数が余ったため、実績のないサービス提供を行ったものとして、介護報酬を水増し請求した事例です。

提供していない介護給付費の請求は許されることではありません。ヘルパーには、日々サービス提供記録を記録し、利用者に確認を得るよう指導するとともに、実績に基づいて適正に介護報酬を請求して下さい。

事業所と利用者が共謀し、不正に得た介護報酬の一部(現金)を利用者に渡した事例

利用者と事業所が結託して、居宅介護計画に基づかないサービス提供を事業所が行い、その見返りとして支給決定上限時間数の介護報酬を請求のうえ、契約利用者に介護報酬の一部をキックバックしている事例がありました。

介護給付費の不正請求を行うことは、犯罪行為であり、事業所の指定取り消し処分だけでなく、詐欺行為として、事業者・利用者とも刑事告発の対象となります。

法人代表者と従業者が共謀し、事業所として不正に介護報酬を得た事例

法人代表者と従業者が結託し、サービス提供実績のない架空の提供記録を作成し、一旦ヘルパーに給与を支払った上、その後、ヘルパーに支払った給与が事業所の口座に戻されている事例がありました。介護給付費の不正請求を行うことは、犯罪行為であり、事業所の指定取り消し処分だけでなく、詐欺行為として、関係者も刑事告発の対象となります。

サービスを提供していないのに、通院等介助のサービス提供をしたこととしている事例

体の調子が良く医療機関に行かなかった場合など、月に利用可能な使用する支給決定時間が余る場合がありますが、「支給決定の時間数を使い切らないと、支給決定の時間数が少なくなる」と誤った解釈をして、支給決定されていない別の内容のサービス提供をしたり、通院等介助を行っていないのに行ったこととして提供記録を作成し介護報酬を不正に請求した事例がありました。実地指導で疑義がある場合、市町村と連携し、利用者からのサービス提供内容の聞き取り等を行うなど、事実確認を行いますので、適正なサービス提供を行ってください。

利用者からのキャンセルによりサービス提供を行っていないのに、介護報酬の請求をしていた事例

ヘルパーがサービス提供を実施した日々の提供記録が書かれていないのに、サービス提供実績記録内訳票はシフト表(サービス予定)どおり作成し、介護報酬を請求している事例がありました。また、当日の急なキャンセルであってヘルパーが訪問しているので、介護報酬の請求ができると誤った解釈をされている従業者もあります。

当然ですが、キャンセルの場合は介護報酬の請求はできません。(重要事項説明書にキャンセル料の説明があれば、契約利用者からキャンセル料を徴収することは可能です。)サービス提供責任者は、日々のサービス提供記録の内容を確認し、キャンセル等でサービス提供がされなかったり、サービス提供時間の変更があった場合は、その事実をサービス提供実績記録内訳票に記載があるか確認してください。

引用元:大阪府/居宅介護事業所の事業運営における留意点についてhttps://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshido/jiritu_top/kyotaku_uneiryuuiten.html

実地指導は、概ね3年に一度の割合で行っているので、不適切な事案が発生していないか、定期的に確認するといいかもしれません。

このコラムを監修した税理士

田代 健太郎

クロスト税理士法人 代表社員

近畿税理士会所属、登録番号126849号
税理士法人3社での勤務を経て、2015年に「田代健太郎税理士事務所」を設立。その後2018年に法人化し「クロスト税理士法人」に。
財務・税務調査の専門家として、決算申告業務、経営支援業務、独立・開業支援業務、医業福祉業の経営支援業務などの業務を提供。
法人に対する支援業務にとどまらず、生命保険・金融資産の検討・見直し、不動産運用に関するコンサルティング、
また相続申告、相続対策など、個人に対しても幅広い各種サービスを提供している。

書籍:「税務調査の良い受け方・正しい対応方法」、「会社経営者であれば知っておきたい節税のイロハ」、「創業計画書つくり方・活かし方」、ゼッタイ得する会社のつくり方はじめ方」、「相続の税金と対策」、「歯科医院経営の成功手法がわかる本」他。

クロスト税理士法人 https://crosst-tax.jp/

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