介護福祉
開業後に差がつく!介護・福祉事業の会計データを経営に活かす月次チェックリスト
介護・福祉事業では、開業後の会計データをどのように使うかで、経営の安定度が大きく変わります。
会計データは、税金計算のためだけのものではありません。毎月の売上、人件費、固定費、未収金、資金繰り、部門別損益を確認することで、早めに経営判断ができます。
しかし、実際には、会計入力が申告時だけになっている、試算表を見ても意味が分からない、売上と預金残高だけを見ている、という事業所も少なくありません。
開業後に差がつくのは、数字を早く、正しく、経営に使える形で見る体制を作れるかどうかです。
目次
会計データは毎月確認する
開業初年度は、特に会計データを毎月確認する必要があります。
利用者数、職員数、請求額、入金額、採用費、設備投資、返戻、未収金などが大きく動く時期だからです。
会計入力が数か月遅れると、資金繰りの悪化や赤字の原因に気づくのが遅れます。
月次で確認するためには、通帳、クレジットカード、請求書、領収書、給与資料、国保連等の支払通知、利用者請求資料を早めに整理する必要があります。
会計データは、早く見られるほど価値があります。完璧な決算書を半年後に見るより、概算でも翌月に見る方が経営判断には役立ちます。
売上の内訳を確認する
最初に確認するのは売上です。
ただし、売上総額だけでは不十分です。
サービス種別別、事業所別、部門別、利用者区分別、加算別、自費分、利用者負担分に分けて確認しましょう。
売上が増えている場合、その理由が利用者数の増加なのか、稼働率の向上なのか、単価上昇なのか、加算取得なのかを確認します。売上が減っている場合も、利用者減少、キャンセル、加算漏れ、返戻、入金遅れなど、原因を分けて考えます。
売上の内訳が分かると、次の行動が明確になります。利用者獲得を強化すべきか、加算管理を見直すべきか、キャンセル対策をすべきか、請求フローを改善すべきか判断できます。
人件費率を確認する
介護・福祉事業で最も大きな費用は人件費です。
月次チェックでは、人件費総額と人件費率を必ず確認しましょう。
人件費には、給与、賞与、社会保険料、残業代、各種手当、処遇改善関連の支給、採用費、研修費などが含まれます。
売上が増えていても、人件費がそれ以上に増えていれば利益は残りません。反対に、人件費を抑えすぎると、職員の負担が増え、離職やサービス品質低下につながります。
人件費率を見るときは、単月だけでなく、3か月程度の推移で見ると判断しやすくなります。採用月や賞与月など、一時的に高くなる月もあるためです。
また、部門別・事業所別に人件費率を見られると、どのサービスが利益を出しているのかが分かりやすくなります。
未収金と入金状況を確認する
介護・福祉事業では、売上が計上されていても、まだ入金されていないものがあります。
国保連等への請求分、利用者負担分、自費サービス、食費、家賃、日用品費など、未収金の管理が必要です。
月次チェックでは、請求額、入金額、未収金残高、1か月超の未収、3か月超の未収を確認しましょう。
未収金が増えると、帳簿上は売上があっても、手元資金は増えません。特に利用者負担分や自費分は、少額でも積み上がると資金繰りに影響します。
未収金は、発生してすぐに対応することが重要です。時間が経つほど回収が難しくなります。
固定費を確認する
毎月発生する固定費も確認しましょう。
家賃、車両費、リース料、システム利用料、通信費、保険料、顧問料、広告費、借入返済などです。
固定費は、利用者数が少ない月でも発生します。そのため、固定費が高いと、売上が少し下がっただけで赤字になりやすくなります。
月次では、固定費の一覧を作り、前月比、前年同月比、売上に対する割合を確認します。
特に、新しいリース契約、車両追加、システム追加、広告契約などは、長期間にわたって資金繰りへ影響します。契約前に、月次損益と資金繰りへの影響を確認しましょう。
資金繰りを確認する
会計上の利益と預金残高は一致しません。
売上はあるのに未収金が多い。利益は出ているが借入返済が大きい。設備投資で現金が減っている。税金や社会保険料の支払いがある。このような理由で、黒字でも資金繰りが苦しくなることがあります。
月次チェックでは、預金残高、入金予定、支払予定、借入金残高、納税予定、社会保険料、賞与予定を確認しましょう。
特に、手元資金月数を確認することが大切です。現在の預金残高で、固定費を何か月分支払えるかを見る指標です。
手元資金が少ない場合は、採用、設備投資、新規出店を慎重に判断する必要があります。
請求精度を見る
介護・福祉事業では、請求精度も経営に直結します。
返戻、過誤、加算漏れ、未請求があると、本来得られるはずの売上が減ったり、入金が遅れたりします。
月次では、返戻件数、返戻金額、未請求額、加算漏れ、請求完了日、記録遅れを確認しましょう。
請求担当者だけに任せるのではなく、現場記録、管理者確認、会計データをつなげて確認することが重要です。
請求ミスが多い場合、単なる事務ミスではなく、記録ルール、加算要件の理解、職員教育、ダブルチェック体制に課題がある可能性があります。
部門別損益を見る
複数サービスを運営している場合は、部門別損益が重要です。
会社全体では黒字でも、特定の事業所やサービスが赤字を出していることがあります。
部門別に、売上、人件費、直接経費、共通費、営業利益を確認しましょう。
共通費の配分ルールも必要です。家賃、管理部門人件費、車両費、システム利用料などをどの部門に負担させるかを決めておかないと、本当の利益が分かりません。
部門別損益が見えると、どの事業に投資すべきか、どの事業を改善すべきか判断しやすくなります。
月次チェックリスト
毎月確認したい項目は次のとおりです。
売上総額、サービス別売上、利用者数、稼働率、1人当たり売上、加算収入、返戻金額、人件費総額、人件費率、残業代、採用費、固定費、営業利益、預金残高、未収金、借入金残高、納税予定、資金繰り、部門別損益、請求精度、職員数、離職状況。
これらをすべて完璧に見る必要はありません。最初は、売上、人件費、利益、預金残高、未収金、資金繰りから始めましょう。
まとめ
介護・福祉事業の会計データは、税金計算のためだけではなく、経営判断のために活用すべきものです。
毎月、売上の内訳、人件費率、未収金、固定費、資金繰り、請求精度、部門別損益を確認することで、早めに課題を発見できます。
当税理士法人では、介護・福祉事業者向けに、月次チェックリスト、月次業績レポート、部門別損益、人件費分析、未収金管理、資金繰り表、経営ダッシュボードの作成を支援しています。会計データを過去の記録で終わらせず、未来の経営判断に活かしていきましょう。
