介護福祉
稼働率だけ見ていませんか?これからのデイサービス経営で本当に見るべき数字
デイサービスの経営で、まず確認されやすい数字が「稼働率」です。定員に対して何人の利用者が来ているかを示す数字であり、稼働率が高ければ安心し、低ければ危機感を持つ経営者様も多いと思います。
もちろん、稼働率は重要です。利用者が集まっていなければ売上は伸びませんし、事業所の認知度や紹介ルート、サービス満足度を確認するうえでも大切な指標です。
しかし、稼働率だけを見ていても、デイサービスの経営状態は正しく分かりません。
稼働率が高くても利益が残らない事業所もあります。反対に、稼働率が少し低くても、利用者単価、加算、人員配置、送迎効率、食事コストなどを適切に管理できていれば、安定して利益を出している事業所もあります。
これからのデイサービス経営では、「何人来ているか」だけでなく、「その稼働が本当に利益につながっているか」を見ることが重要です。
目次
稼働率は大切だが、出発点にすぎない
稼働率は、定員に対してどれだけ利用されているかを示す数字です。たとえば、定員30名のデイサービスに24名が来ていれば、稼働率は80%です。
この数字を見ることで、利用者が十分に集まっているかを把握できます。稼働率が低い場合、営業活動、ケアマネジャーとの関係、地域での競争、利用者満足度などに課題がある可能性があります。
しかし、稼働率だけでは利益は分かりません。
同じ80%の稼働率でも、利用者の介護度、サービス提供時間、加算の取得状況、送迎距離、必要な職員数、食事やレクリエーションのコストによって、利益は大きく変わります。
稼働率を上げることだけを目標にすると、採算を考えずに利用者を受け入れ、売上は増えているのに利益が残らない状態になることがあります。
利用者1人1日当たり売上を見る
デイサービス経営で重要な数字の一つが、「利用者1人1日当たり売上」です。
これは、月間のサービス売上を、月間の延べ利用日数で割って計算します。
この数字を見ることで、利用者1回当たり、どれくらいの売上を得られているかが分かります。
利用者数が増えているのに、1人1日当たり売上が下がっている場合、短時間利用が増えている、単価の低い利用が増えている、加算を十分に算定できていない、サービス内容の構成が変わっている、といった可能性があります。
稼働率が高くても、1人当たり売上が低ければ、現場は忙しいのに利益が残りにくくなります。職員の負担、送迎、記録、請求業務は増える一方で、十分な収益につながっていない状態です。
利用者1人1日当たり売上は、毎月確認し、前月、予算、前年同月と比較することが大切です。
加算収入と加算漏れを確認する
デイサービスの売上は、基本報酬だけで決まるわけではありません。各種加算の取得状況によって、月間売上は大きく変わります。
ただし、加算は算定要件を満たして初めて請求できます。人員配置、記録、計画書、研修、会議、モニタリングなどが不足していると、実際にサービスを提供していても請求できない可能性があります。
加算漏れは、利益に直接影響します。職員はすでに業務を行い、人件費も発生しているにもかかわらず、記録や確認不足によって売上にならないためです。
経営者様が確認すべきなのは、「加算を取っているか」だけではありません。「本来取れる加算を漏れなく請求できているか」「要件を安全に満たせているか」です。
月次では、加算別の売上、必要書類の不足、返戻、請求修正、予定していた加算収入と実際の差額を確認しましょう。
人件費率で成長の持続性を見る
デイサービスは、人件費の割合が高い事業です。介護職員、看護職員、機能訓練指導員、送迎ドライバー、厨房職員、事務職員など、多くの人が日々の運営を支えています。
そのため、人件費率は必ず確認すべき数字です。
人件費率は、売上に対する人件費の割合です。人件費には、給与、賞与、パート賃金、会社負担分の社会保険料、通勤手当、残業代、採用費、派遣費などを含めて考えます。
稼働率が上がっているのに人件費率も上がっている場合、売上を増やすために想定以上の人員や残業が必要になっている可能性があります。
ただし、人件費率を下げるために、安易に人員を減らすのは危険です。職員に過度な負担がかかると、事故、苦情、欠勤、離職につながります。
大切なのは、人件費を単に削ることではなく、利用者数、サービス内容、職員配置、残業時間、サービス品質とのバランスを見ることです。
出席率・キャンセル率・当日欠席を見る
稼働率が安定しているように見えても、キャンセルが多い事業所は利益が残りにくくなります。
デイサービスでは、予定利用者数に合わせて、職員配置、送迎ルート、食事、入浴、レクリエーションを準備します。当日欠席が多いと、売上は減る一方で、すでに準備した人件費や食材費、送迎体制は大きく変えられません。
そのため、予定利用者数、実際の利用者数、キャンセル率、当日欠席率を毎月確認する必要があります。
また、曜日別や利用者別に傾向を見ることも有効です。特定の曜日に欠席が多いのか。特定の利用者のキャンセルが続いているのか。天候、体調、送迎、家族都合など、何が原因なのかを確認します。
キャンセルを減らすことは、新規利用者を増やすことと同じくらい、利益改善に効果があります。
送迎効率は利益を左右する
デイサービス経営で見落とされやすいのが、送迎の効率です。
稼働率が高くても、送迎ルートが非効率であれば、職員の運転時間が長くなり、燃料費、車両費、残業、職員の負担が増えます。
送迎については、ルート別の所要時間、車両ごとの利用状況、待機時間、1ルート当たりの利用者数を確認しましょう。
遠方の利用者を受け入れることで売上は増えるかもしれません。しかし、送迎時間が長く、他の利用者の送迎にも影響が出る場合、全体の採算は悪化する可能性があります。
事業所として、どのエリアを重点対応エリアとするのかを決めることも重要です。すべての新規利用者を受けることが、必ずしも経営にとって良いとは限りません。
食事・レクリエーション費用を管理する
デイサービスでは、食事、おやつ、レクリエーション、入浴、機能訓練など、利用者満足度に関わるサービスを提供します。これらは大切なサービスですが、コスト管理も必要です。
食事コストは、月額合計だけでなく、1食当たりで確認しましょう。レクリエーション費用も、利用者数や満足度と合わせて見ます。
費用をかけること自体が悪いわけではありません。満足度が上がり、利用継続や紹介につながっているのであれば、意味のある投資です。
一方で、利用者数に対して材料費や消耗品費が増えすぎている場合は、仕入れ、在庫、廃棄、内容の見直しが必要です。
曜日別の利益を見る
月間利益だけを見ると、曜日ごとの採算差が見えません。
デイサービスでは、曜日によって利用者数、職員配置、送迎ルート、入浴人数、レクリエーション内容が変わることがあります。そのため、ある曜日は利益が出ていても、別の曜日は採算が悪いということがあります。
たとえば、月曜日と木曜日は利用者が多く送迎も効率的だが、水曜日は利用者が少ないのに職員配置は同じ、というケースです。
曜日別に見ることで、営業活動を強化すべき曜日、人員配置を見直す曜日、送迎ルートを改善すべき曜日が分かります。
月次だけでなく、曜日別・日別の視点を持つことで、現場に近い経営改善ができます。
資金繰りは利益とは別に確認する
試算表上は利益が出ていても、資金繰りが苦しいことがあります。
給与、社会保険料、家賃、車両費、税金、借入返済、設備投資などは、毎月または定期的に現金支出を伴います。
そのため、利益だけでなく、預金残高、入金予定、支払予定、納税時期、借入返済を確認することが大切です。
特に、賞与支給、車両購入、設備更新、納税が重なる月は、黒字でも資金が減ることがあります。
経営者様は、「利益が出ているか」だけでなく、「安全に運営できるだけの現預金が残っているか」を毎月確認しましょう。
月次ダッシュボードを作成する
これからのデイサービス経営では、確認すべき数字を1枚にまとめた月次ダッシュボードを作ることをおすすめします。
主な項目は、稼働率、利用者1人1日当たり売上、加算収入、人件費率、キャンセル率、送迎時間、1食当たり食事コスト、残業時間、曜日別利益、営業利益、預金残高などです。
これらの数字は、単独で見るのではなく、関連づけて確認します。
稼働率が上がっていても、キャンセル、残業、送迎時間が増えていれば、現場に負担がかかっている可能性があります。反対に、稼働率が少し下がっていても、利用者単価や曜日別利益が改善していれば、経営状態は良くなっている場合もあります。
数字を見る目的は、資料を増やすことではありません。経営判断を早く、正確にすることです。
まとめ
デイサービス経営において、稼働率は重要な数字です。しかし、稼働率だけでは、事業所の本当の経営状態は分かりません。
これからは、利用者1人1日当たり売上、加算収入、人件費率、キャンセル率、送迎効率、食事・レクリエーション費用、曜日別利益、資金繰りまで確認する必要があります。
満員に近い事業所が、必ずしも利益の出る事業所とは限りません。大切なのは、利用者に良いサービスを提供し、職員を守りながら、継続的に利益を残せる経営体制を作ることです。
当税理士法人では、デイサービス事業者向けに、月次業績レポート、人件費分析、加算収入チェック、資金繰り計画、経営ダッシュボード作成を支援しています。稼働率中心の管理から一歩進み、本当に利益につながる数字を見える化していきましょう。
