介護福祉
【訪問看護】訪問看護事業開業時の創業融資はいくらまで借りられる?
目次
融資はいくらまで借りられる?
総合的な判断になるため一概には言えませんが、経験上、特に問題がなければ、準備した自己資金の2~3倍の融資が受けられるのが一般的です。
融資のご相談を頂いた場合、まずお勧めしているのが日本政策金融公庫です。
一般の金融機関では、開業したばかりで実績のない会社が融資を受けることは困難です。
しかし、国がバックアップする政府系の融資機関である日本政策金融公庫では、起業家を積極的に支援する制度があり、事業を始めたばかりの方でも融資を受けやすくなっています。
融資を受けることができるかどうかは、次の3点がポイントです。
- 一定レベルの自己資金があるか
- 事業計画書をいかに工夫して作成するか
- 面談で金融機関の融資担当者に事業計画の内容をきちんと説明できるかどうか
自己資金は一番の信用材料
自己資金は、融資の返済能力を見る1つの指標であり、設立したばかりの会社にとっては、一番の信用材料となります。
※ちなみに、自己資金とは、ご自身で準備した資金(≒出資金)ということです。
誰かから借りたものではないかどうか、資金の出所を面談で必ず重点的に確認されます。
貸す側の立場で考えると、『貸すかどうか、いくら融資するか』の一番の信用材料である、自己資金をきちんとご自身で貯めたか、その金額がいくらかということは、確認して当然かと思います。
介護事業においては、介護保険給付の請求をしてから、入金までに2ヶ月かかるというタイムラグがあります。
また、面談から審査を経て、資金が入金されるまで約1ヵ月かかります。
事業を開始するとすぐに、事業所を借りるための費用や内装費、従業員に支払う給料などの出費が発生します。こうした出費をまかなうためにも、一定の自己資金を準備しておくことが不可欠です。
事業計画では実現可能性、返済可能性をアピール
事業計画は、『将来的に経営を継続していくことができるか、資金がきちんと返済できるか』の観点から審査されます。
事業の成長や継続に疑問が残れば、融資が受けられないことや、希望の金額が融資してもらえないこともあります。
事業計画では、次のポイントをしっかり説明できることが重要です。
- なぜ起業するのか
- どんな経験やスキルをもっているか
- どのようなサービス/商品を、誰に対して、どのように提供するか
- 同業他社と比べて、どのように差別化できるか
- 必要資金と収支の見通し
面談では、事業計画に内容について、細かく質問が投げかけられます。
施設への訪問調査などが行われるケースもあります。
絵にかいた餅ではなく、実現可能性があり、融資担当者を納得させられる事業計画の作成が必要です。
訪問看護の事業計画で最も注目される点
訪問看護事業の創業融資において、最も注目される点は、
- 必要人員を確保できる見込みがあるか
- 利用者を集客することができるか
の2点です。
まず、必要人員についてですが、訪問看護事業は看護師の採用が必須となります。しかし、看護師の採用は年々難しくなっており、採用に苦労する傾向にあります。
代表者に看護師としての経験が豊富で、看護師との人脈に富む場合などは、人材確保において有利であるため、融資においてもプラスの評価を得やすいです。
次に、利用者の集客ですが、代表者の職務経験などから、病院やその他施設からの紹介がもらえる場合は、融資において大きなプラス評価となります。
そういった人脈、戦略がある場合は、アピールすると良いと思います。
融資のタイミング
融資を申請するタイミングは、事業所となる物件を決めて、内装工事や備品の購入の目途がたった時点が良いでしょう。
申込は法人を設立すればすぐにでもできますが、事務所がないと審査が始まらないためです。
事業計画書や申込書の作成準備は会社設立前でも進められます。
事業計画を作成することは、事業に対する思いや、将来的にどうしていきたいか、ぼんやりとかんがえていることを明確にする良い機会となります。
時間をかけて、じっくりと事業計画の作成に取り組むことをおすすめします。
訪問看護事業の開業に必要な資金
先に融資の金額として、「準備した自己資金の2~3倍」と記載しましたが、当然のことながら開業に必要な資金とかけ離れた多額の融資がおりるわけではありません。
融資の金額は、自己資金以外にも、開業に実際どれだけ必要かも加味されます。
それでは、訪問看護事業の開業にはいくら必要なのでしょうか?
訪問看護ステーションは医療法人が開設する場合がありますが、ここでは看護師が開設する場合にどれだけ資金が必要かについて説明します。
さらに、出来るだけ少ない資金で開設することを念頭にします。
開業費用
まず、開業時に必要な費用は、
- 会社設立費用
- 建物賃借するときの敷金・保証金
- 事務所備品、事務用品
などです。
賃貸する建物は、家賃や敷金・保証金が出来るだけ安いところを探します。
- 表通りに面する必要はなく、
- 駅前でなくてもよく、
- 新築でなくてもよく
- 広い面積でなくてもよく(最低でも20㎡以上)
さらに、家主さんに社会的意義の高い事業であることや入金が3ヶ月後であることを説明して、フリーレントの期間や家賃の値下げを交渉してください。
ダメもとです。交渉できるのは、この時しかありません。
また、事務所の机、椅子、書庫(鍵付き)などの備品は中古で十分です。
FAXやコピーは、最初から立派なものを揃えるのではなく、割安の複合機にします。電話機はビジネスフォンは高いので、家庭用の電話機にします。
このように出来るだけ抑えると、上記の1~4の費用は100万円以内で済むと思います。
開業後の費用
さて、次は開業してからの費用です。
主な費用として人件費や家賃、その他の経費が発生します。
あなたが看護師で訪問看護ステーションを開設するなら、事業が軌道に乗るまで給料は無給です。
- 看護職員はあと1.5人必要ですが、給料を1人あたり1ヶ月35万円×1.5=52.5万円。
- 家賃が1ヶ月6万円。
- その他の経費が1ヶ月21.5万円
と仮定すると1ヶ月で80万円かかります。
ご利用者1人あたり5万円の収入があると仮定すると、80万円÷5万円=16人で損益トントンです。
開業してから、毎月新規のご利用者を3人ずつ獲得することができたとしたら、収支は次のようになります。
開業月 | 2ヵ月目 | 3ヵ月目 | 4ヵ月目 | 5ヵ月目 | 6ヵ月目 | 7ヵ月目 | 8ヵ月目 | 9ヵ月目 | 10ヵ月目 | |
ご利用者数累計 | 3人 | 6人 | 9人 | 12人 | 15人 | 18人 | 21人 | 24人 | 27人 | 30人 |
入金額 | 0円 | 0円 | 15万円 | 30万円 | 45万円 | 60万円 | 75万円 | 90万円 | 105万円 | 120万円 |
出金額 | 80万円 | 80万円 | 80万円 | 80万円 | 80万円 | 80万円 | 80万円 | 80万円 | 80万円 | 80万円 |
収支差額 | ▲80万円 | ▲80万円 | ▲65万円 | ▲50万円 | ▲35万円 | ▲20万円 | ▲5万円 | 10万円 | 25万円 | 40万円 |
繰越差額 | ▲80万円 | ▲160万円 | ▲225万円 | ▲275万円 | ▲310万円 | ▲330万円 | ▲335万円 | ▲325万円 | ▲300万円 | ▲260万円 |
この事例ですと繰越差額のマイナスが7ヵ月目で一番大きく▲335万円になります。
開業時の100万円と併せて、435万円の開業資金が必要になります。
融資が決定した際に気を付けること
審査が通り、融資が決定した際、できるだけ早く融資金を入金して欲しいと思う方が多いかもしれませんが、場合によっては入金を遅らせたほうがいいこともあります。
それは、内装工事や建設工事等が遅延し、すぐにはまとまった資金が必要ない場合などです。こういった場合には、融資金がすぐに入金されると、しばらく使わずに置いておくことになります。しかし、利息や返済(据置期間がある場合は別)は、融資が実行された時から生じるので、おいているだけの期間にも利息が発生してしまいます。そのため、そのような場合には金融機関の担当者と相談し、融資の実行日を遅らせるなどしてみると良いかもしれません。
さいごに
クロスト税理士法人では、介護福祉事業の開業に関して、初期相談から、事業計画作成、融資サポート、法人設立、指定申請代行、各役所への届け出の提出とまとめてご相談可能となっております。また、初回無料相談可能となっておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。