税務会計
【介護事業経営】従業員の所得税・住民税の決定と納付
介護事業を経営するにあたって、従業員の雇用は必須です。
会社の役員や従業員など、会社からの給料で収入を得ている場合、一部を除き自身で確定申告をする必要はなく、会社が代わりに給料から天引きされた所得税や住民税を納税しています。この記事では、給料から天引きされた所得税や住民税がどのような流れで決定し納税されているのかを解説します。
目次
所得税の天引きと納付
毎月支払われる給料からは、「源泉所得税」「源泉徴収税」といった名目で、いくらか総支給額から差し引かれています。これが所得税の概算の金額で、差し引く金額は「源泉徴収税額表」を基に計算されます。
源泉徴収税額表(国税庁ホームページ):
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2022/02.htm?_fsi=KlQj3uRk
給料から差し引かれた源泉所得税は、会社が代わりに納税しますが、その際の納税のタイミングは2つのパターンがあります。
- 毎月納付
- 納期の特例
「毎月納付」の場合は、給与を支給した翌月の10日までに納付手続きを行います。
「納期の特例」は従業員10人以下の比較的小規模な会社が選択できる納付方法で、1月から6月までの上半期分を7月10日までに、7月から12月までの下半期分を翌年1月20日までに納付します。
所得税はその年に納めると推測される金額の1ヵ月分を事前に毎月の給料から天引きし、会社が代わりに納めておく、という方法をとっています。しかし、そのままでは1年間を通して天引きした金額と、最終的に納めるべき税金の金額との間に差が生じてしまいます。その差を調整するための処理が、次に説明する「年末調整」です。
年末調整
年末調整は、社員の年間の給与収入等を確定し所得税の金額を計算する処理です。毎年11月から12月あたりにかけて行われるのが一般的です。
会社は社員に毎月給料を支払っているため、各社員の給与収入や社会保険料の金額、源泉所得税の金額などは、当然会社が把握しています。しかし、税金の金額を確定させるためには、扶養している家族の情報や支払った生命保険料の金額など、本人しか知り得ない情報も必要になります。そのため、年末調整の際に以下の申告書を各社員が作成し、会社に提出します。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書
会社は提出された上記の申告書を基に各社員の所得税を計算します。そうして確定した所得税の金額とそれまでに天引きした源泉所得税の金額とを比較し、天引きしすぎているものは各社員に返金し、天引きが不足しているものは追加で徴収します。
最後に調整が反映された税金の金額を基に会社が源泉所得税を納付します。
給与支払報告書の提出と住民税の納付
年末調整で算出されるのは、各従業員の所得税です。会社は、各社員の住民税を確定させるために、年末調整の結果を各社員の住む市区町村に報告する必要があります。そのために会社が提出する書類が「給与支払報告書」です。
給与支払報告書は各社員が翌年に納付すべき住民税の金額を決定するためのものですが、住民税の納付の方法には下記の2種類あります。
- 普通徴収
- 特別徴収
「普通徴収」は納税者が自身で納付する方法で、「特別徴収」は給料から住民税を天引きし会社が代わりに納める方法です。どちらの方法を選択するかは、給与支払報告書に記載しますが、特別な理由のない限りは特別徴収が適用されます。
特別徴収が適用された場合、毎年5月ごろに各市区町村から住民税の通知書が会社に届きます。通知書には各社員分の住民税について、何月にいくら納めればよいか記載されており、それを基に給料から住民税の金額が天引きされ、会社が住民税を納付します。
まとめ
今回は会社の役員や従業員の所得税や住民税が、どのように決定され納付されるか、全体の流れをまとめました。会社側(経営者や経理の方)はもちろん把握しておくべき流れであり、社員の方も全体の流れを把握することで、毎月給料から天引きされている税金について、深く理解することができます。ぜひ本記事を参考にしてください。